「AKI!今度の日曜日はまたマイナス20度まで下がるわよ」
野菜配達用の車のエンジンをかけながらKatharina(私の農場主の奥さん)は言った。
「Echt?」うそでしょーと、午前中の白菜の出荷作業で、凍りそうに冷えきった手を温めながら私は答えた。
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白菜の収穫 |
Grussgot!!こんにちは。こちら、南ドイツはVaihingen Enzから8代目研修生AKIがお送りします。
私の配属されている農場はDemeterという認証を受けて、有機野菜の栽培の他、有機家畜として牛、豚も飼育しています。
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雪に埋まるタマネギ |
「12月20日マイナス20度だったとき、友達とEsslingenのクリスマスマーケットに行ったんだけど、私の足はほんとに冷たくなった。髪の毛も鼻の中まで凍ったんだから!」
と言うと、Katharinaは笑いながら凍りついている道路へ慎重に車を走らせた。
一月です。日本にいる時から寒い、寒いと聞いていた”ドイツの冬”
今は寒い、寒いと思っている”ドイツの冬”
ずっと楽しみにしていたドイツのクリスマスマーケットも終わり、ドイツ人は家族と静かに過ごすというクリスマスも終わり、友達と大騒ぎするSilvester(ドイツの大晦日)も終わり、あっという間に農場での生活も、もう9ヶ月経ちました。
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春のガラス室 |
春。この農場に配属された4月。
色とりどり、元気いっぱいのサラダ菜たちで埋め尽くされていた大きなガラスハウス。
黄色に輝いて、蝶やミツバチたちも踊っていた菜の花畑。
まだ小さいのに、大きくなる日を今か今かと待っていた何千ものトマトの苗たち。
赤く、大きく実ったさくらんぼにラズベリー。
ジャムを煮る甘い香り。
農場の露地には春ねぎ、ルバーブ、ラディッシュ、えんどう豆の苗、フェンネル、たくさんのハーブ類、多種類のサラダ菜たち。そしてもちろん、長い冬の間待ち望んでいた春。ドイツ人も太陽の下で日向ぼっこ。
夏。BBQに川遊び。なんてったって夜10時まで明るいんだから!
畑は夏野菜たで賑やか。
ズッキーニにトマト、きゅうりにナスにニンジン・・・
他にも見たこともない西洋野菜のたち。新しい秋用野菜の植え付け、除草作業・・・
夏が恋しい・・・
太陽が植物たちに、そして私たちに降り注ぎ輝いていた。
毎日の作業中も、暑い中みんなで冗談言い合って笑いあった。
仕事量が多くて残業する日もあったけど、充実感で満たされていた。
水撒きパイプで水をかけあってじゃれあった。
楽しくて暑くて素敵だった。
夏が恋しい・・・
最近は16時には暗いので外の作業はできなくなる。寒いからみんなも冗談なんて言っていられない。
「Ich komme nie wieder nach Deutschland!」
(もう二度とドイツになんて来ない!)
ってFeldsalat(ノジシャ)と呼ばれるドイツの典型的な冬野菜を収穫し終わった後、私は体を震わせ泣きそうになりながら言った。後でこれは、皆の話のネタにされるんだけどね。
春、夏、秋、冬。もう全部見てしまった。
気づけば、この農場での生活も残り三ヶ月を切った。
12月の農場のクリスマス会のときの話。みんなで久しぶりにギターに合わせて歌を歌ったね。夏のBBQのとき、Katharinaの誕生日会の時、同僚の赤ちゃんが生まれたとき、いつも歌った思い出の曲たち。私は歌を聴きながらこらえられなくなって泣いてしまった。楽しい時間なのに泣いていた私をみんなは不思議に思っただろう。けどね、私にとってこの曲たちは、みんなが歌ったこの曲たち、わたしはあと1,2回しか聞くことができないと思う。みんなは歌い続けるかもしれないけど、きっとわたしにとっては「AKIのお別れ会」で最後になるんだ。そう思ったら悲しくて、かなしくてみんなの顔見ていられなくなったよ。
「もう二度とドイツになんて来ない!」って叫んだ私は、心の底からこの農場を愛してしまっている。
今年の三月。まだ私たちがドイツ語語学学校にいた時、去年の先輩たちが最終報告会のために語学学校にやってきた。私は、欧州支部職員の皆戸さんに「私たちも先輩たちの報告書読めるんですか?」って軽い気持ちで聞いた。
「見たいの?でも君たちの研修の答えはまだ出ていないよ。先輩たちはもう答えが出ているからね。」
今度は私たちが答えを出す番。
未知の世界だった”ドイツ”にやってきて、ドイツに住んで、見て、聞いて、感じて、何も分からない中、すべて手探りでやってきた、この一年間の研修。みんなの答えは、もう出ていますか?
ドイツ組で4月から始めた交換ノートに誰かが書いてあったけど「泣いても笑っても残り三ヶ月!」
残りの時間で、何を得ることができるかな?
私の中で、この研修の意義はだいたい固まっている。でも、それはまだ今の段階。三月の帰国までは少ないとはいえまだ日がある。
日本へは笑って、笑顔で帰りたい。
日本が寒くないことを祈って。
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