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Herbstversammelungレポート! パート2
〜ドイツ現場の最新事情〜

春田耕平(ドイツ修生:神奈川県出身)
 

 
 Gartenbau Engels(花農家)

 某花農家へ。農家の説明をしてくれた人は「雇われ経営者」の人。「え?経営者を雇ってんの?」と疑問を抱いた。農家はハウス23棟2.5haと露地0.8haで生産を行っていた。露地はもうかなり寒かったため見学したときはハウスが中心だった。一歩ハウスの中に入るとそこは一面花畑。その美しさに圧倒されると同時に「これが全部野菜だったら毎日の収穫めちゃくちゃ大変だな」と変なことを考えてしまった。

 印象的だったのは水と管理についての話。潅水には雨水がある限り地下水は使わない。それは地下水に豊富に含まれる石灰が原因で潅水管が詰まってしまうからで、自分の農場で石灰の詰まりを取るために潅水官の掃除をしたことを思い出した。潅水には雨水を用いているが、ただそのまま利用するのでなく紫外線消毒をしている。これで雨水を殺菌し植物の病気を最小限に抑えることができる。

 私は農場に入る手前で大量のウッドチップを目にしていた。これは堆肥化させて育苗に使うのかと勝手に解釈していたが、暖房のための燃料だった。ヨーロッパでは最近、石油の値段の高騰と供給不安に対する懸念からHolzheizung(木を原料にした暖房)への移行が進みつつある。ウッドチップを大きな焼却炉で燃やして得た熱を水に伝え、熱湯をハウスの鉄管に通す。これでHolzheizung→Wasserheizung(水暖房)の完成。言ってみれば簡単なのだが、この設備にかかる費用は計り知れない。自分の農場でこの事を話したところ「私たちも出来るなら今すぐそういった設備を揃えたい。しかし費用がかかりすぎるのだ。」と言われた。わかってはいたが現実は厳しかった。しかし、このHolzheizung。石油に頼らず環境にやさしいと評判のようだがCO2の問題は視野に入れられているのだろうか?先日行ったMesse(見本市)でもHolzheizungのブースが出ていて資料をいろいろもらったのだがCO2問題についてはノータッチだった。この問題はまだクリアしていないのだろう。

 そんなわけで見慣れない花農家の見学はハイテク機器の応酬で、これらを野菜に取り入れることを想像するだけでかなり興奮した。

Obsthof-Brauweiler(シナップス生産)


  訪れた農家では取った果樹で自家製シナップス(アルコール度40%程度の強い酒)を生産していて、直売場も所有していた。様々な形のビンに入ったシナップス、リキュール。酒好きの男ばかりでなく、そのビンの美しさ、シナップスの色に女性陣も目を奪われていた。私たちが店の商品に夢中になっているうちに農場主が顔を見せた。

 まず蒸留器を見てすぐ分かったのは、蒸留器それ自体がすべてガラスで覆われていること。つまりガラスの箱の中に蒸留器があったのだ。農場主の話では、酒税法により、農家はアルコール(100%)1?につき13ユーロ(約1700円)を払う義務がある。ガラスケースの中にはメーターがついていて、農家がどれだけの量のアルコールを生産したのか税務署が調査できる。そして農家はこれを勝手に触れてはいけない。そのためのガラスケースだった。もし故障した場合、税務署の許可を得て修理しなくてはいけないらしい。それとは別に、南ドイツでは醸造権というものがある。農家は蒸留を行う際、時間・量などの醸造計画を税務署に申請する。そしてアルコールの量に見合った税金を払い、決められた時間で蒸留を行わなければならないのだそうだ。2つの醸造のルール、このとても厳しいルールの上でシナップスが作られていることを今回はじめて知った。

 そしてついにシナップス作りの説明へ。印象的だったのは蒸留したアルコールをついに取り出す際、試飲によってほしいアルコール分を取り出しているということ。そして、その判断は秒単位で下さなければならない。これはすべて味覚と経験に頼るもの。シナップス作りは果実の品質とその判断力で決まる。そう話した農場主に私たちは彼のシナップスに対する誇りを感じた。

 最後に私たちは実際出来たシナップスを試飲した。さくらんぼのシナップスだった。飲むと口のなかでさくらんぼの風味が広がった。農場主の目は「うまいだろ?」といわんばかり。やっぱり自分の作ったものに誇りを持つ人の目はいい。自分も食べる人にこんな目を向けることが出来る農家になりたい。そう心から思えた。