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「私は成長したのかな?」
あっというまの1年間。研修もいよいよおしまい

<連載 第12回

柿谷信実(スイス研修生:高知県出身)
 


 スイセンの花が咲きました(家の中でだけど)。フッと約一年前が思い出されて懐かしくなりました。

 初めてこの家に来た日も親分が、私の部屋にスイセンの花を生けてくれていた。「その花に感動したなー、あれから一年かー」。こんなカンジで私は、最近ボーっとこの一年を振り返ることがよくある。何度考えても最後は深い、明るいため息で終わってしまって、これといった結論は出ない。

 正直なところ、私はこの一年でいったいどこがどのように変わり、成長できたのか、または成長していないのか、自分自身でも分かりません。

 いろんなことがあって、私は私なりにやってきました。それなりに成長したんじゃないかな? と思うけど、どこがどーと聞かれると分からないです。きっとそれは日本に帰ってから、いやっつーほど、実感させられるだろうなーと予想しています。そして、とうとう明日で研修が終わってしまう。

 今、私にあるのは、帰国が近い喜びと、仕事からの解放感と、明後日からの旅行(最後に三週間ほど、ヨーロッパを旅行できる)に対する不安と、この家を離れるさみしさと…。

 今まわりに居る人たちは、これからはそんなに簡単に会うことはできなくなる。仲良くなったおばさま達は、最近次々にお別れのプレゼントをくれる。手あみのマフラーなんて、涙で濡れてしまいそうだ。それなのに、こんな感動にひたる暇もなく、私は明後日から始まるヨーロッパ旅行への不安におそわれている。ヨーロッパは悪質なスリが多いと言われているし、各地で起こっているテロがいつまたどこで起こるか分からない。

 ちょうど一年前にも、昨年の研修生たちがヨーロッパ旅行をしている期間中にスペインで列車が爆破された。次はどこだろう? と、私の頭も考えざるをえない。二年前には「アフリカをバイクに乗って一人旅をしてー」なんて、でかいこと言ってた自分が信じられない。物質的に豊かなヨーロッパなのに、こんなに不安が積もっていく。安全面を考えると、一年間延ばした髪をまたボーズにしてやろうかとも思う。でも今さら切るのはもったいない。せめて父に一目見せてから切りたいものです。それに髪を切ったところで、身の安全が保障されるわけでもない。だから今のところは思いとどまっている。けど明日は……?

 人生、先は見えないものだー! でも私、今結構幸せです。あー帰ったらお母ちゃんのおにぎり食いてーなー。

 
 
※この原稿は『農村報知新聞3月号』に掲載されたものです。