国際農業者交流協会TOPページへ

TOP > 海外からの便り > 研修生便りバックナンバー > バックナンバー


Herbstversammelungレポート! パート1
〜ドイツ現場の最新事情〜

春田耕平(ドイツ修生:神奈川県出身)
 

 
 11月23日、私たちドイツ農業研修生の秋会合がスタートした。今回の会合には通訳が同行してくれた。今まで面白そうな場所を見学してもドイツ語の理解力がいまいちな私たち・・・少なくとも私は、内容の半分も理解できず、悔しい思いをしていた。しかし、今までもやもやしたものを持ちつつ見学していたのが今回は100%理解することが出来た!

Centralmarkt FirmensitzRoisdorf(青果市場)

 市場面積34ha。第一印象は「でかい!」恥ずかしいことに私はドイツに来るまで市場というものを見たことが無かった。しかし、幸運なことに研修の配属農家は自身で立ち上げた市場を持っていたため、すでに市場というものを見たことはあった。が、面積は2ha程度。規模の違いに圧倒された。

 市場では競売場、出荷場、パッケージ置き場などを見学した。競売場には現在使われている時計のほかに設立当初の木製の時計が掛けられていた。競りのシステムを聞き、初めて見る競売場に心躍った。しかし、現状は商品の80%がインターネット、電話で取引されるそうだ。そしてこの80%の顧客はほとんどが大企業。

 出荷場へ。私たちが見学したのは8時前で、あったのは前日から置かれているりんごだけだったが、10時〜12時の間農家のトラクターで、12〜14時には配達のトラックでごった返すそうだ。市場には近隣600件の農家が出荷しており、野菜・果樹とも300件。市場の売り文句は「朝穫り昼売り」。市場が大量消費地に近いため、新鮮な野菜を売りに出すことができるのがこの市場の利点なのだそうだ。また他の生産地よりも2〜3週間早く収穫ができる気候条件のため、その間生産物を高価で売ることができるのもここならではの利点なんだという。

 最後はパッケージ。これはドイツに来てからずっと興味を持ってみていたのだがドイツは(ヨーロッパは?)プラスチック箱の普及率が高い。市場でも多くのプラスチック箱を多く見かけた。話によれば、ドイツには3,4種類出荷用プラスチック箱の規格があり、すべてデポジット制を採用しているらしい。この辺はさすが環境先進国と言われるだけある。出荷先の都合上段ボール箱を使いもするが、大抵が再生紙を使用しているとのこと。日本も早くプラスチック箱を普及させてダンボール箱などをなるべく使わないように普及すべきだと強く思った。

Garten Therapie(園芸療法)

 園芸療法を実践している病院を訪ねた。病院だと聞いていたが中に一歩入るとホテルのように明るく、開かれた印象を受けた。園芸療法は認知症、神経症など脳神経系の病気に対するリハビリの一種。昔は運動・音楽・美術療法が主流だったが、近年土に触れること、自然に触れることが知覚に対し良い効果をもたらすということで園芸療法が見直されている。2004年にはドイツで園芸療法士の資格が制定された。説明してくれた方はドイツの園芸療法士資格制定に深く関わった人だった。

 まず、園芸療法の治療の考え方として、「人はみな100%健康なわけではなく誰もがどこか少しでも悪い部分を持っている。認知症、神経症の人も同じである。園芸療法では失われた悪い部分を取り戻すだけでなく、残った良い部分を伸ばすことを目的としている。」ということを教えられた。今までの自分にはない考えだったのでこのときすでに園芸療法に対して衝撃を受けた。

 園芸療法についての話を聞いた後実際の庭へ。リハビリのために施した工夫を説明してもらう。印象的だったのは庭に対する考え。普通の庭は横から見て庭造りをするところ、ここでは患者がいつも病室から庭を見ることを意識して、上から見た場面を想定して庭造りをしていること。患者の外にでる意思、自主性を育てることの出来る庭であること。さらに、効果的な庭であるために、「どのような緑をみるのが一番効果があるか」という研究を元に安心を与えるわかり易い庭の中に開拓心、感性に刺激を与える意外性を少しだけ盛り込んだということ。

 実際に園芸作業を体験させてもらった。土を触り、作業をすることはリハビリの上でとてもよいとのこと。オランダの農家では神経症、認知症患者を受け入れて作業体験を実施しているところもあるそうだ。農業の大きな可能性を知ることが出来てうれしかった。

※パート2へ続く:Gartenbau Engels(花農家)、Obsthof-Brauweiler(シナップス生産)について。