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スイスのことを知れば知るほど
日本に興味を持ってしまう不思議
<連載
第4回
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柿谷信実(スイス研修生:高知県出身)
六月三十日、私と同じく親分の家に住む、ロシア人研修生のエフゲーニーが二十三歳の誕生日を迎えた。その日の昼は普通に仕事。でも、夜はなんちゃってパーティー! 親分夫妻と息子夫妻とその子ども。偶然にも歩いて十五分のご近所に派遣されている日本人研修仲間がヒョッコリ顔を出した。(実はこのご近所さんは、本紙「ルンルン通信」でおなじみの安田弥生さんの派遣されていた農家だったりします!)
さてさて、その彼ですが、日頃は私のなんちゃってドイツ語をかたっぱしから正しいドイツ語に直していき、時には「もっと勉強するべきだー!」なんて怒ったりもする、私のドイツ語の先生でもある! が、その日はバースデー! 突然「手伝ってくれる?」と言って私の部屋に来た。何をするのかと思えばバームクーヘンを作るという。そんなのどーやって作るんだ??? と思っている私をよそに「卵はどこだ? ボールは? 小麦粉は…」と私に聞きながら、男のくせにさっさと生地をつくり、焼きはじめた。出来上がったのは五センチ位の高さに積み上がったクレープのかたまりだった。ロシアではこれをバームクーヘンと呼ぶのか??? チューリッヒではクレープをオムレッテと言ってた。まったく何なんだろー。お好み焼きを一回作ったけど、やっぱりそれも「ヤパーニッシュ、オムレッテ?」(日本のオムレツか?)と言われてしまった。「もー何でもいーよ」の世界だ! とりあえず、このバームクーヘンをかこんでシャンパンを開け、ドイツ語でハッピーバースデーを歌い、後は三カ国語の会話に花が咲いた!
ここで私は疑問を持った!! 今回彼は、自分ですべて準備した。シャンパンもケーキも…。もう一人モルドバって国の研修生も、いつだったか誕生日に自分でお菓子を作り、ワインと一緒に持ってきて、みんなで食べた。私の実家には、誕生日に自分でお祝いの準備をする習慣はない。家族や友達がその人のために何かを用意し、祝福するのが当たり前だと思っていた私にとって、これは不思議だった。日本もそうだっけ? と思ったけど、今さら分からない。少なくとも私の周りにはそういう習慣はなかった、と思う…のでこれを異文化として見ていいのか迷った私だった。
海外派遣選考試験で作文を書いたが、ひらがなが多くて「足もと見直してから海外に行った方が…」なんて言われた記憶がある。確かに、スイスを知っていくうちに、これって日本じゃどうなんだろー? と考えることがある。日本にいた時より、もっと日本に興味を持ってしまった。この一年は日本への好奇心は眠らせて、スイスに目を向けてようと思うけど、愛国心のかけらも無かった私にとって、これは大きなメリットだ! やっぱ来てよかったなースイス!
※この原稿は『農村報知新聞7月号』に掲載されたものです。
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