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デメター農場のイベントに参加
恒例の「プレパラート」
<連載 第8回

柿谷信実(スイス研修生:高知県出身)
 


 
 秋になりました。スイスも秋です。ドイツも秋です。デメター農場も秋です。

 春夏秋冬、年四回デメター農場ではイベントを行います。その名はプレパラート。私は二年前から例の記事によって、プレパラートのことを知っていました。だから、できることなら一度参加してみたいと思っていました。

 そもそもプレパラートとは、何種類かあるらしいけど、この四回やるやつはバケツの水をぐるぐる回して右回しは宇宙からのエネルギーを吸収、左回しは内側にある悪いものを出す。なんていった意味不明のシュタイナーワールドのもので、他のプレパラートの例をあげると、牛の角に牛のクソをつめて地面に埋め、半年後に掘り返す。なんて、さらにわけのわからないものであります。そのわけのわからなさが何げに私の興味をそそってくれる。

 秋のプレパラートは、ある日の土曜の午後に行われました。私は毎週土曜の午後と、日曜が休みです。だけど、土曜の午前中の仕事が終わってから行ったのでは全然間に合わないので、親分に申し出て「どこかで穴埋めするからこの日半日は休みにして欲しい」と理由を話した(なんちゃってドイツ語で)。何の問題もなく親分は簡単にOKをくれました。さぁ再びデメター農場へ!

 朝一の列車でスイスを出て、AM十時にはデメター農場に到着。またまた収穫作業を手伝わせてもらった。ついでに台所の床掃除まで。あれっ! これっていつもの仕事じゃ…!?

 昼休みをはさみ、PM二時からプレパラートは始まりました。ちょーわくわくしながら、集まった人たちや、用意されたバケツなどをじっくり見ては写真を撮りました。そんな中、農場主が何か話し始めた。何のことだかさっぱり理解できなかったけど、どうやら、あいさつと説明らしかった。そしてあやしげな白っぽい液を小さじ一杯だけ、みんなのバケツに入れていく。その中身は… 小麦粉、ブドウの果汁、卵白、はちみつ、ミルク、塩、ヒマワリ油だそうです。それを混ぜることによって空気も入れるという。水に空気を入れるとは、どーゆーことでしょう? このわけのわからなさが、また、私の頭と心をくすぐってくれる。

 そして一時間混ぜました。正直な第一の感想は、腕が痛かった。でも驚いたことに、水温は人によって温かかったり冷たかったりする。はじめはみんなぬるま湯からスタートする。私はそれから冷たくなり、最終的にはぬるくなった。もっと冷たい人もいれば、もっと温かい人もいました。何故? とにかく、その水温の違う水を全部一緒にクソでかいバケツに入れてさらに混ぜていました。その間、私たちは落ちていたクルミを割って食べておりました。だって、秋なんですもん!

 その後、また各バケツに戻され、いざ畑に散布しに行きました。絵のようなブラシに水をふくませて、畑に散らしていく、地道に見える作業でしたが、やってみれば早いもので、五分もしないうちに撒き終わってしまいました。

「次何すんの?」と聞くと「もうこれで終わり」と、サラリとプレパラートは終わってしまった。

 何をしたかと聞かれると「まぜまくった!」とだけ言ってしまいそうなプレパラートだったけど、これがプレパラートです。わけわかんねー(笑)

 
 
※この原稿は『農村報知新聞11月号』に掲載されたものです。