-フィリピン技術協力事業 現地リポート- No.6:ケソン州PAFC(パフシ)ミーティングで
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※PAFC(パフシ)とはProvincial Agricultural Fishery Council(州レベルの農水産業評議会)の略称で、NAFC(ナフシ)(National:国レベル)、MAFC(マフシ)(Municipal:町レベル)、BAFC(バフシ)(Barangay:地区レベル)といった具合にそれぞれの名称があります。
ケソン州はベンゲット州の約300km南に位置する非常に面積の広い州です。フィリピン農業省大臣の故郷ということもあり、有機農業を普及させようとする現農業省の方針を象徴するかのようにフィリピンの中でも有数の有機農業地域です。行政は有機農業を盛り上げていこうとしているのですが、フィリピンには日本の普及員のような技術専門の指導者がおらず、市町村の農政課職員が行政と技術指導をかけもちでやっているため、指導体制が弱いという問題があります。栽培レベルは個々の農家で大きな差があり、全体的なレベルもまだまだ低い状況にあります。
私達が普及を進めているSAVERS技術(Safe Vegetable from Rich Soil)は炭・木酢・堆肥による土作りをベースにした減農薬栽培です、完全な有機栽培ではなく、必要最低限の化学合成農薬や化成肥料は使います。しかしながらこれらの資材・技術は有機農業においても非常に有効であることがフィリピンでも認知され始めています。ケソン州PAFCから技術レベルの向上にぜひ協力してほしいという強い要請を頂き、こうしてはるばるベンゲットからやってきたのです。
今回のセミナーでは多忙なスケジュールの中、農業省副大臣とNAFC長官がマニラから出席され、このセミナーに対する強い関心と期待が伺えました。ベンゲット州から坂元プロジェクトマネジャー、プロジェクトスタッフでデモファーム管理責任者のリッキー氏、ツブライ町農政課長のジェフリー氏の3名がゲストスピーカーとして出席しました。プロジェクトが始まった2007年から今日までの経過、ベンゲット州での取り組み、炭・木酢・堆肥の効用や具体的な使い方についてそれぞれがプレゼンテーションをしました。これらに加えてパラワン島、ミンドロ島の技術指導で活躍しているグアダ氏(フィリピン現地レポート平成25年5月号参照)もパラワンにおける木酢技術普及までの経過について紹介してくれました。
現地語タガログ語でのプレゼンテーションということもあり、いつにも増してプレゼン内容に非常に興味を持って頂いたようでした。これまでのセミナーとは異なり、研究者や各町の農政課長が出席者の大半を占めていただけに学術的な質問が多かったのが印象的でした。
セミナー終了後に早速ドラム缶式の簡易型炭窯設置の技術指導を開催してほしいとの要請を頂き、おそらく近い将来にもプロジェクトの技術セミナーができることでしょう。
参加者からは「ベンゲット州で成功しているからと言って、気温、経営規模、品目がまるで違うケソン州で本当にうまくいくのだろうか?」というコメントもありました。しかしケソン州と農業の条件がよく似ているパラワン島でもすでに有効性が見出されて少しずつ技術が広がっています。今後はベンゲット州のみならず、他の州がお互いに協力しながら技術発展していくと期待しています。