TOP > フィリピン技術協力事業 > 現地レポート > 4

-フィリピン技術協力事業 現地リポート-

No.4:ベンゲット州の紹介

 今日はプロジェクトの現地、ベンゲット州を紹介します。

1.概要

 ベンゲット州(日本の「県」に相当)は、ルソン島北部の山岳地帯(コーディレリア地域といいます。)の一部です。最も有名で大きな都市であるバギオ市は州内に位置しますが、行政的には独立して州に属していません。因みに州都はプロジェクトの基点であるラ・トリニダッドです。

写真1.ハルセマロードからみた山岳風景

 バギオ市を除くベンゲット州は、面積2,600平方キロメートル、人口は37万人。バギオ市を含んでも60万人ですから、長野県の面積13,500平方キロ 人口215万人に比べると小ぶりです。住民は山岳民族の人が大部分。マニラ近辺の人々に比べて物静かですが、まじめで純真な人柄と感じます。

 州内には13の町があります。一番大きいラ・トリニダッド町は人口約10万人、一番小さいサブラン町は人口約1万1千人です。州には知事と議会議員、町には町長と町会議員がいずれも選挙で選ばれます。3年ごとに改選されます。

 この地域の大部分は標高1000〜2000メートルにあります。ラ・トリニダッドから1,2時間も行けば息をのむような山岳風景にお目にかかれます。

2.気候

 ベンゲット州の気候は温暖です。首都マニラに比べると気温が10度程低く、7,8月でも昼間の温度が25度を超えることはそう多いことではありません。日本の冬に当たる1‐3月でも、州庁舎のあるラ・トリニダッドでは日中の気温が15−20度、夜は10−13度くらいでしょうか。標高2000メートルにもなると気温はもっと低くなりますが、雪が降ることはありません。6月〜11月が雨季、12月〜5月までが乾季です。

 このようなしのぎやすい気候ですから、この地にあるバギオ市は「サマーキャピタル」(夏の首都)として栄え、人口30万の大都会に成長しました。今でも大統領の別荘「マンションハウス」があり、クリスマス休暇などに大統領が逗留するそうです。

写真2.キブンガン町へ行くには、このような未舗装道路を2時間走行する。雨が降ると雨水が道路を滝のように走り、道の両側から土砂が崩れ落ちて通行不能になることも多い。

3.観光

 観光資源は、冒頭にご案内した風光明媚な山岳地帯、避暑地として人気のあるバギオ市、世界遺産として登録されているイフガオまで行かなくても見ることのできるアトックの棚田(パリナ、ナゲイ)、ツバとツブライの温泉、ラ・トリニダッドのイチゴ狩り、ボコドのアンブクラオダム、イトゴンの鉱山など多様です。特に州を南北に縦断する幹線道路ハルセマロード沿いに展開する山岳と傾斜地の野菜畑は圧倒的な迫力で私たちに迫ります。

4.交通


 マニラからベンゲットへの移動は車です。マニラとの距離は260キロ、うち150キロは高速道路が使えますが、残り100キロは一般道路なので6〜7時間はかかります。最後は約1,000メートルの標高差をおよそ1時間かけて上ることになります。バギオまで飛行機便が復活する予定ですが、週2,3回なのであまり便利になるとは思えません。

 州内の交通は殆どがクルマを使いますが、幹線道路でも2車線しかなく、強い雨が降ると土砂崩れで不通になることもしばしばです。町と町を結ぶ道路は未舗装の部分もあるので、観光に訪れる方は乾季中、それも12月から3月の間がお勧めです。

5.産業

 主な産業は農業と鉱業です。農業は冷涼な気候を活かした高原野菜(キャベツ、ニンジン、バレイショ、レタス、ダイコン)、イチゴがとくに有名で畑の面積が1万4千ヘクタール、生産量が70万トンといわれています。鉱業は金、銅などを産します。イトゴンでは、操業中の鉱山を観光客に開放しています。

写真3.傾斜地を刻んで作ったブギアスの野菜畑。生産物を道路まで運び上げるにも大変な苦労を要する。ここの野菜も、ラ・トリニダッド経由して、バギオ野菜としてマニラに供給される。

 高冷地野菜は主としてマニラ首都圏へ出荷されます。産地で野菜を中継する最大の基地はラ・トリニダッドにあるトレーディング・ポストです。ここから出荷される野菜は「ベンゲット野菜」とは言わず「バギオ野菜」と呼ばれます。最近はフィリピンの他の地域へも運ばれます。バギオ野菜は、ほかの産地から来るものよりも高値で売買されます。

 ベンゲットの野菜については改めて詳しく紹介しましょう。

Copy Right 社団法人国際農業者交流協会