TOP > フィリピン技術協力事業 > 現地レポート > 18

-フィリピン技術協力事業 現地リポート-

No.18:鷹尾保馬OBの研修レポート

 今回は本会の海外派遣事業に参加した鷹尾保馬OB(H12/米1)が平成20年5月末から4ヶ月間、現地プロジェクトサイトで研修をしていますので、同氏からのフィリピンレポートを紹介します。 

 こうした研修もこのプロジェクトでは心強い支えになります。

 今後もこのような機会を増やし、多くの方々に支援して頂ける活動にしていきたいと考えています。


 はじめまして。ここベンゲットのプロジェクトサイトで研修をさせてもらっている鷹尾と申します。現在3ヶ月以上が経過し、残り期間が3週間となったところです。

 2001年にアメリカでの野菜農場を中心にした1年制の研修でこの協会にお世話になりましたが、フィリピンで大学院への進学を志望している関係で環境に関する勉強が必要となったため、改めて環境保全型農業に関する実地での経験が積みたく、ここでの研修をさせてもらっています。

空き地、道路わきの草を刈取る。雨期には草の生長が早く、材料は豊富。

 環境保全型で、その方法論としては木酢液を活用した堆肥による土作りや病害虫防除に焦点をおいた「有機的(英語ではorganic-basedと称している)」野菜生産という形をとっています。「有機(100% organic)」ではなく「有機的」というのは、生産、売上価格、費用と労働の効率を考えると「無農薬」よりも「減農薬」の方が現実的であるとの判断に拠っています。

 生産活動に関しては横森技術指導員のご指導をいただき、現地人スタッフと一緒に作業をしています。5月頃からこの地は雨季となり、ほぼ毎日午後は雨となるため、畑の野菜は根腐れなどの病気を起こしやすく、連作障害を避けて土作りに専念することもあり、私の研修期間中は作業時間の大部分を堆肥作りと暗渠掘りに費やしました。

刈取った草を積み上げるとこんなにたくさん。
これが堆肥の原料となる。

 畑の近くの空き地や道端にプロジェクトのバンで乗り付け、一帯の雑草を刈って車に満載し、ビニールハウスの中で刈った草を10センチほどの長さに切っては、それが山ほどの量にまでなると、鶏糞や籾殻くん炭、そして木酢液などと混ぜて堆肥の山を作る。そして堆肥が発酵して温度が上がると数日ごとに切り返し。その作業の繰り返しに明け暮れました。これまでは短大で実習しても、青年海外協力隊で行ったアフリカ・ブルキナファソの水田地帯で数回体験することがあっても、経験が散発的だったので「身についた」感覚がなかったのですが、今回はずっと繰り返し行なったので、堆肥作りがようやく自分の血肉として定着した感じがします。堆肥作りはどんな作物に対しても普遍的なものであるだけに、短期間の研修でしたが自分にはとても充実感の得られるものでした。

 フィリピンと聞くと南国だし、きっと暑い所だと私はついつい想像していたのですが、来てみると標高約1500mと高いため非常に涼しく気温は25度以上になることは少なかったです。早朝に外に出ると息が白く凍ることもあり、これが本当にフィリピンか、と愕然としました。7、8月の日本の暑さを想像し、この涼しさでとても得をした気分になりました。但し前述の通りほぼ毎日雨が降るため、ビニールハウス内の作業もやり尽くし、何もやることがなくなって現地人スタッフと共に呆然と座って困り果てたこともありました。台風の時には2日間激しく雨が降り続き、外に出ることすらできず、家の中でこれまた呆然と過ごしたこともありました。ひたすらに雨が降り続いた雨季もようやく終わりに近づいている感があり、最近は時々雨が降らない日があります。但しまだまだ台風はやってくるらしいので、油断はできません。

 食事も米食中心で、おかずも醤油ベースの味付けが多いためおいしく、アメリカやアフリカでは入国後数ヶ月で常に10kg以上体重が減っていたのですが、ここでは逆に体重が増えています。肥満体の定着という予期せぬ事態にわずかながら危機感を抱いている昨今です。

 最後になりましたが、ご指導いただいた横森氏、現地でお世話になっているスタッフの中島氏、このプロジェクトで研修を可能にしていただいた国際農業者交流協会(JAEC)に感謝しつつ、現地人スタッフと一緒に研修の残り期間も頑張っていこうと思います。

(鷹尾保馬)



Copy Right 社団法人国際農業者交流協会