-フィリピン技術協力事業 現地リポート- No.40:新たな技術改革を目指す
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木酢と有機資材の講演を行う前川氏 |
前川さんはブラジルで1万ヘクタールの農場を経営し、横森さんの指導を受けて炭と木酢を利用して有機ダイズを栽培しています。木酢はそれ自体に土壌改良資材や農薬代替材として使えますが、前川さんはこれにニームオイル(熱帯産植物ニームの実からとれる成分で有機農薬として利用される)、プロポリス(ミツバチが巣箱の入口に作るもので、病害防除に利用できる)、トウガラシの辛み成分などを加えて、効果の大きい農薬代替資材を作り、これを適当な濃度に希釈して自らの農場で散布しています。
このような資材の多くはフィリピンでも入手することができ、これを木酢と混合して利用することにより安全野菜栽培に貢献できると考えられます。横森さんが体調を崩して現地での指導が暫く出来なくなったため、昨年12月に代役を前川さんにお願いし、有機農薬代替材の製造・利用に関するセミナーを3回にわたって開催し、合計約300人に対し講義してもらいました。このセミナーは大きな反響を呼び、このような有機資材の作り方、使い方の実際を具体的に指導してほしいという強い要望があったため、新しいプロジェクトでは前川さんも技術指導員の一人として、新しいプロジェクトに参加してもらうことになりました。
前川氏の講演に聞き入るアトックのバラオ町長
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今回のセミナーでは木酢と混合するニームオイル、プロポリス、トウガラシ、ニンニク、そしてランタナなどを会場に持込んで、これを木酢に浸漬または混合する農薬代替材の製造の実演も行いました。なお、ランタナはベンゲットに自生する野草で独特の臭気を持っており地元では害虫の忌避効果があるといわれているので、木酢で成分抽出して効果を確認することにしました。新しくプロジェクトに加わったアトックの町長も参加して熱心に聞き入っておられました。
3年前にラ・トリニダードで開始したプロジェクトから引き継がれるこのプロジェクトでは、安全野菜生産技術の改良を目指して、更に新しい有機資材の開発にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。