-フィリピン技術協力事業 平成26年度 現地リポート(2)- No.1:訪日アセアン研修生OBを訪問
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<訪日アセアン研修生について> |
国際農業者交流協会(以下、JAEC)では、日本政府ODA事業(政府開発援助)の一環として、毎年アセアン諸国等の農業青年を我が国に招致し、基礎研修と専門研修を組み合わせた11ヶ月の農業研修を実施しています。(当事業をJAECでは『アセアン受入事業』と呼んいます。) |
プロジェクト活動のためレイテ島を訪問中、フィリピン研修生OBの農場を訪問することが出来たので、その状況を報告します。台風で甚大な被害を受けたにも関わらず、2月に受け取った義援金(昨年11月以降にJAECが受入農家や事業関係者に募って集めた義援金を2月に手渡した)を新たにグリーンハウス建設のために使い、新しくフィッシュファームも始めようとするなど、まだ被害の爪あとが深く残るレイテ島において、新たな希望を見たので、是非みなさんに報告したいと思います。
アレックスさんが住む村(バランガイ)の様子 |
その青年は1997年に山形県の武田功さんの農場に配属になったアレックス・アボリタ(Alex O. Aborita)という研修生OBです。レイテ島内のJaroという町で農業をしていますが、ご存知のとおり、レイテ島は昨年11月の台風で壊滅的な被害を受けました。彼の農場も全ての作物がダメになり、私が訪問した際もココナッツの倒木が多く見られるなど、被害の大きさを知ることが出来ました。ただ、彼の住む村に足を踏み入れた途端、景色は一変。シンプルながら、よく管理されている家、庭先、道路。農場へと案内してくれている最中に目に飛び込んできたのは、建設中のフィッシュファームでした。
JAECからの義援金で立てたグリーンハウス |
台風の後は何もなくなってしまった畑には、トマト、レタス、ナス、ピーマン、かぼちゃなど約20種の野菜が栽培されており、見事な農場が広がっていました。彼を中心にFarmers Associationを形成しており、本当によく管理されています。そして目に飛び込んできたのがグリーンハウスです。何より聞いて嬉しかったのが、2月にJAECから受け取った義援金をグリーンハウスの建設に使ったとのこと。義援金を生産的なものに投資し、新たなスタートの手助けになったということが本当に嬉しかったです(材料は地元で手に入る竹を使っており、JAECからの義援金でプラスティックを購入したとのこと)。
アレックスさん | 農場の様子 |
彼は化学肥料、農薬を一切使わず、野菜、果物、畜産を手掛け、そして現在はフィッシュファームも建設中です。
Farmers Associationで建設中のフィッシュファーム。ここでもアレックスさんのリーダーシップが光る |
彼の家で取れたてのキュウリ、レタス、カラバオステーキ、ココナッツジュース等で、お昼をご馳走になりましたが、最高のランチでした。彼に話を聞いた処、2月に義援金をタクロバンで受け取った3日後、受入農家の武田さんから電話があり、15年ぶりの会話をしたそうです。とにかく自分は大丈夫だということを伝えましたが、お母さんは電話越しに泣いていたと話してくれました。また、その際に武田さんから銀行口座のアカウントを聞かれ、数日後、お父さんから直接義援金を送ってもらったという話もしてくれました。
アレックスさんの家族。
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彼の地域にはインターネットもなく、なかなか連絡を取ることが出来ない状況なので、今回、写真を武田さんに送ってとお願いされました。直接私から写真と報告書を山形県の武田さんに送りましたが、彼が本当に元気で農業やっていることを是非伝えたいと思いました。彼は研修生時代にお父さんから子供は2人までにするようにアドバイスを受けたらしいのですが、現在4人の子供(全員女の子、写真には2人しか写っていませんが、2人は学校に行っている時間だったので)がいると笑いながら話してくれました。可能だったらもう一度会いたいと言っていました。
彼はこの小さな村のリーダーをしており、彼のリーダーシップは目を見張るものがあります。限られた時間の中での訪問でしたが、村に足を踏み入れた際の印象ですが、シンプルながら、一軒一軒がよく家の手入れをしており、村全体が本当に美しかったです。レイテ島の復興にはまだまだ時間が掛かるでしょう。被害は本当に甚大です。ただ、この小さな村で大きな希望・光が見えました。研修生OBは本当に強いです。彼は立派に地域のリーダーになっています。そして研修生とホストファミリーの絆に感動です。受入事業関係者の方々に多くのフィリピン研修生OB達は素晴らしい地域のリーダーになっていると伝えたいです。