TOP > フィリピン技術協力事業 > 現地レポート > 2

-フィリピン技術協力事業 現地リポート-

No.2:イチゴの安全栽培技術に取り組むA

菊地農園(長野県南佐久郡南牧村)のイチゴ高設栽培。このシステムをモデルにしてフィリピンのイチゴ栽培技術を組み立てます。右端はベンゲットでイチゴ栽培を指導する菊池辰夫さん。左隣が研修生リンド、1人おいて研修生ジョニュエル。

 前回ご紹介しましたように、危険な農薬使用を極力減らした安全なイチゴを一年中生産できるよう、プロジェクトでは「安全イチゴ作戦」の試みを始めました。

 毎年3月、ハウスの中にイチゴを植え付けて、夏場の6月〜11月まで収穫する長野県南佐久郡で行われている夏イチゴのハウス栽培が、そのお手本です。大きいハウスの中の高設ベッドを使っています。この施設をそのままフィリピンへ導入するのでなく、現地の実情に合わせた簡易なシステムを作ります。現地で指導してくださるのは南牧村の栽培農家菊池辰夫さんと、長野県農業試験場技師武井正明さんです。

 「安全イチゴ作戦」の第1はプラスチックハウス内での栽培です。路地に比べてコストは掛かりますが、できるだけ簡易な雨除けハウスにします。(台風で吹き飛ばされないようにある程度の強度が必要ですが。)

 第2は栽培方法です。プランターまたはベッドを使って地面から離し、水と肥料はドリップ潅漑で供給します。こうすれば土壌伝染性の病気(フザリウムなど)が容易に防げます。培地はココナツシェルを細かく砕いたココダストで、フィリピンではいくらでも手に入ります。プロジェクトでは、日本で採用されている高設ベッド方式と、地面にプランターを並べる方式の二つを試験しています。高設方式では地上1メートルほどの高さにベッドを作ります。立ったまま作業ができるので便利ですが、ベッドを設置するスティール製ラック、ベッド本体として培土を保持する特殊フィルムにかかる費用が大きいのです。ですから、現地の普及版としてはプランター方式、あるいはこれをさらに簡易化した方法(例:板囲いのベッドなど)を想定しています。プロジェクトによる今までの経験からみて、プランター方式の費用は高設ベッドに比べて何分の一かに削減できます。

ベンゲットに作った試験用イチゴ高設ベッド。イチゴ技術指導を行う武井さん(長野県農業試験場技師)
高設ベッドを下から見たところ。鉄パイプ、フィルムなどのコストが大きい。
ベンゲットで試験中の縦にならべたイチゴプランター。プランターの真ん中に潅水チューブを渡してある。高設ベッドと機能は同じだが、低コスト。

 第3は品種の改良です。現地で栽培されているスウィート・チャーリーやフェスティバルの品質はまあまあいいのですが、日本でいう「冬イチゴ」(一季性)といわれるものなので、「夏イチゴ」(四季性)の品種ではありません。ただし日本の夏イチゴは果肉が軟らかすぎてすぐ潰れてしまうので、フィリピンの流通では扱えません。そこで、日本に限らず海外の四季性のイチゴとスウィート・チャーリーなど現地品種に掛け合わせ、四季性の品種を育成しようとしています。

 「安全イチゴ作戦」には不確定要素もありますが、何とか実現にこぎつけたいと考えています。地元ベンゲット州とラ・トリニダッド町も大きな期待のもとに積極的にこの作戦に加わっています。

Copy Right 社団法人国際農業者交流協会